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佐賀家庭裁判所 昭和39年(少ハ)1号 決定 1965年1月14日

少年 決定N・M子(昭二〇・六・一八生)

主文

本件申請を却下する。

理由

(申請の理由)

本件申請書の「申請の理由」記載のとおりであるからこれを援用する。

(主文の決定に至つた事情)

本件については昭和三九年一月二九日、同年二月一日の二回に亘り審理を為した結果、申請の理由は全面的に肯認されるところであつたが、諸般の事情を考慮し、一般戻収容の決定を留保し、しばらく少年の動向を見守り、且その更生を図るのが相当と考えられたので、昭和三九年二月一日試験観察決定の上、少年を坂井茂に補導委託をした。

しかしながら少年は同年四月三〇日に同じ委託少年A子、B子と共謀して委託者方を出奔し、熊本市方面に赴いたまま、その消息を断つたが、本年一月始め頃に自宅に戻つて居ることが判明したので同月八日当庁に少年を同行し観護措置を執つた。

受託者方を出奔後の少年の行動について(特に生活状態、非行の有無)、担当調査官の報告によれば、少年は出奔後日ならずして熊本市において現職に就き、今日まで一貫して極めて真面目な生活を続け、非行も全く無いことが推認出来る。

そうすると、少年は相当な自制心を喚起し、従来の生活態度を改め、社会適応性を具有して来たものと見られ、現在は生活信条も確立し、自らの力で更生の途を明るく歩みつつあるものと言つて差支えない。

少年は、本年一月一五日に成人式を迎え、六月一八日を以て満二〇歳と成り、大人の世界に入ることになるわけであるが、従来少年期に非行を累ねていたのが成人期を境として立直るケースの多いことに鑑み、少年の現在の生活態度が将来崩れを見せることなく、むしろ、その生活信条において愈々強固さを加えると見るのが妥当と思われる。

そうだとすると、少年を少年院に戻して収容する必要性は認められないので本件申請はこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 末光直己)

参考

申請の理由

前記保護観察の経過及び成績の推移に記載の通り少年は仮退院帰住後担当保護司の斡旋により就職したにもかかわらず稼働意欲は全く認められず無断欠勤、無断外泊、不健全交遊、諸所徘徊等の連続であり、その生活態度は極めて不安定且つ自由奔放でほとんど家庭に安定することなくその間、交友関係の調整、生活態度改善のため青年団加入やBBS会員委嘱を配慮し、又再三保護者を保護観察所に呼出して保護観察の主旨を説示して積極的な協力を要請するも少年自身に勤労意欲がなく、且つ保護観察になじまず保護者である母親も虚偽の申立を行うなど現状の少年に対処した指導並びに保護は期待出来ない状態であり前記少年の行為は、犯罪者予防更生法第三四条第二項により規定された一般遵守事項の各号並びに少年仮退院許可決定に際し当委員会が同法三一条第三項の規定により定めた特別遵守事項の

(3) 母の許で真面目に辛抱よく働くこと

(4) 勝手に外泊、外出しないこと

(5) 交友関係を改善すること

(6) 遊びを慎み地道に生活すること

(7) 一身上のことは保護司とよく相談すること

以上各号に違反しており、右の事実は別添え資料の第一乃至第七により佐賀保護観察所保護観察官福田秀雄作成に係る本人並びに保護者N・S子及び関係人○喜○枝、○頭○次、東○守、○田○郎に対する調査書において充分認められるところである。

よつて現段階において保護観察による少年の更生は到底困難と思料し、この際再度少年院に収容して規律ある生活訓練により勤労意欲の涵養と併せて性格の陶冶をはかることを相当と認める。

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